汁物が欲しい
家に独りの平日。長女の弥生を送った午前9時、二日酔いによるズキズキする頭を抑えながらすぐにスーパーに寄った。仕事が休みの日は、いつもブランチだ。朝と昼の兼用の食事を摂るため、また夜ご飯の食材の買い出しだ。
今日のブランチはお蕎麦にした。飲み過ぎた翌日は喉が渇き、汁物を欲している。ツルっとしたのど越しと、さっぱりとした口当たりの食事を摂りたかった。
昼と夜用に勝ってきた100グラム108円の国産鶏もも肉。ほどよい脂身がありながらさっぱりと食べられる鶏もも肉は、値段と味のバランスが取れている。
キッチンドランカー
ざく切りにしたもも肉を、油を熱した小鍋でジュージューと炒める。赤い生肉がこんがりと焼けていく音と匂いが、僕の「飲みたい」気持ちを助長させる。
スーパーで買った、98円のレモンチューハイのプルトップを開け5口ほど一気に喉に流し込んだ。大量生産で薄利多売重視のこの商品、安さ満点のアルコール臭が僕の胃をじんわりと温める。
肉が白くなったと同時に、同じくザクザクと斜め切りした青ネギを鍋に入れる。辛いネギが甘くなるまでじっくりと炒める。ネギがほのかに茶色がかったら、既成の麺つゆの原液を注ぎ入れる。
ジュワ!!
めんつゆの甘辛い匂いがさらに酒を進ませる。キッチンドランクとは、よく思いついたものだ。酒飲みにとって、あらゆる作業も酒があればすべてが楽しいエンターテイメントになる。
一緒に温めて置いた別の鍋に入ったお湯がグツグツと沸騰しだした。
「Siri、タイマー5分」
最近は本当に便利すぎる時代だと思う。この一言だけでタイマーが計れてしまうのだ。
スーパーで調達した乾麺の蕎麦をお湯に投入。自分の場所を確保しようとするかのように、麺同士がおしくらまんじゅうを始めたかと思うと、まっすぐだった麺がしんなりとし始めてきた。
鶏モモとネギが煮込まれた麺つゆもグツグツと沸騰している。このままではしょっぱくて食べられたものではない。
T-falであっためた熱湯をそこに注ぎながら味見をする。ちょっとしょっぱいかなくらいでお湯を止める。
「…うん、すこしだけしょっぱい。このくらいがお酒と合うんだよ」
すでにほろ酔い状態の僕。誰もいないを良いことに独り言が多くなってしまうのは、僕の酔い方の特徴である。
ピピピピ…!
iPhoneのタイマーがなった。蕎麦が茹で上がった合図だ。カチッとコンロを着る。火を止めると、ブワっと湯気が立ち込める。
ステンレスの流しにザルをセット。お湯と一緒に蕎麦を投入。ベコンッ!とステンレスがゆがむ音がした。
湯切りをした茹でたての蕎麦をどんぶりに入れる。ちょっとしょっぱい具材が入った麺つゆをドボドボとどんぶりに追っかける。簡単なブランチの完成である。
棚からジョッキを取り出し、氷をガラガラと入れる。その時にいつも3~4個、氷が床にボトボトと落ちる。なみなみといつも入れすぎなのである。
家のハイボールはいつも濃いめで作れてしまうのが良い。2対5くらいが理想なのだが、いつも1対1の超濃いめを作ってしまう。
サントリー角瓶を入れた後に、シュワシュワと音と泡を立てた炭酸水が追っかける。
シュワシュワ…シャワシャワ…炭酸の色んな音が耳を刺激する。
「…よし、できたぞ」
蕎麦と酒
ホカホカと湯気が立っている蕎麦の隣に、自家製ハイボールをコトンっと置く。この2品だけで贅沢なご馳走である。
「…ごくッ。いただきます!」
濃いめのおつゆをズズッとわざとらしく音を立てる。…しょっぱい。でも鶏肉の脂とネギの甘さが溶け込んだ、大好きなつゆだ。1口、2口と、どんどんと飲んでしまう。
麺を箸ですくい上げる。麺からポタポタとつゆが垂れてくる。フーッと思いっきり二度三度、息を吹きかける。そして思い思いに麺をすする。ズルズルズル!!
「…はぁ。うまい」
塩っけがつよい蕎麦を食べると水分が欲しくなる。隣に置いてある黄金色のハイボールを喉で飲む。
「…ぷはぁ!」
二日酔いには向かい酒が一番である(おおいに間違っている)。さっきの頭痛はどこへやら。あっという間に蕎麦を平らげて、再びほろ酔いの状態が僕を包み込む。
どさっとソファに倒れ込む。食事もある意味運動で、カロリーを消費する。額に汗をかきながら、僕はぼーっと余韻に浸りながら天井を見つめていた。
続く
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