第28話~かぼちゃのシチュー~

物事の考え方

子供の舌を考えて…

「ねぇパパ、きょうのよるごはん、なぁに?」

保育園からの帰り道、長女の弥生が僕を見上げる。僕の右手は彼女の左手を握りしめている。

「今日は、シチュー。簡単で美味しいからね。弥生はシチュー好き?」

「すきー!」

こどもはシンプルな食べ物を求める。シンプルだが、ちゃんとしたものを食べさせてあげたい。弥生が大きくなって、中学高校の友達と食事でジャンクフードなどを食べる機会が増えるだろう。友人たちの交流は大切にしてあげたい。「ジャンクフードなんて食べる友達と付き合うな」なんて、そこは親の出る幕ではない。

ジャンクフードがしっかりしてない食べ物とは言わないが、必ず食べる機会がやってくる。事実マクドナルドが弥生は好きでよく連れて行く。

ジャンクフードと、家で作る料理…どちらの食事も経験させることで、あらゆる食べ物を食べられるような女性に育ってもらいたい。

シチューの素を使うのも良いのだが、家に買い過ぎた牛乳を使ってシチューを作ることができる。

調理開始!

帰宅して、手を洗って長袖の腕をまくる。

「パパ、うがいしよう」

「そうだね、一緒にうがいをしよう」

弥生と隣り合わせで台所のシンクでガラガラ嗽をする。口を酸っぱく言い続けて、ようやく自らうがいをするようになった。少しずつの成長が親として嬉しい。

冷蔵庫から、たまねぎ、にんじん、しめじ、鶏もも肉、かぼちゃ、を取り出す。

全てをテキトーに切る。5才の長女が食べやすいようにだけ気を付けて…

深い鍋にオリーブオイルを大さじ1杯。玉ねぎを飴色になるまでじっくりと炒める。

ジュー…

玉ねぎを入れた瞬間に香る香ばしい匂い。辛い玉ねぎが熱により甘くなることを想像しながら、楽しみながら炒める。

肉を入れる。赤い肉が白くなるまで。にんじんと、しめじ、かぼちゃも続々と入れる。ゴトゴトとした人参と、プリプリとしたしめじの感触が、しゃもじを通じて伝わってくる。硬さの違う組み合わせは、不思議なくらい相性抜群だ。

「やよい、冷蔵庫から牛乳を取って」

「はぁーい」

素直な5才児は、冷蔵庫に向かう。1Lの牛乳パックを両手に抱え、コンロに立つ僕の方へヨタヨタと歩く。

「はい、パパ」

彼女にとっては重いだろう牛乳を、両手で僕の前に差し出す。

「ありがとう」

ある程度いたまった具材に、小麦粉をふんだんにまぶす。大さじ5杯くらい。目分量で。粉っけがなくなったタイミングで、牛乳をひたひたに入れる。分量はテキトーで大丈夫。あとで味を見ながら調整すれば良い。

コンソメ顆粒をバラバラと。いっとき前はコンソメブロックを使っていたが、最近顆粒の方が使い勝手が良いことに気がついた。

火を弱火にしてあとはほとんど放置。こげつかないように時々かき混ぜてやれば出来上がりだ。

食事

弥生は料理の手伝いに飽きて、ソファで寝っ転がってYouTubeを見ている。

「隣、失礼しますね」

「はぁーい」

可愛い返答にほっこりしながら、彼女の隣に座る。iPhoneで15分アラームをかけて、今お気に入りの川口俊和さんの小説を開く。せわしない毎日に訪れる、穏やかなひと時。15分だけというのがまた、時間の大切さを際立たせる。

ピピピピ

あっという間に時間が経過する。キッチンに向かい、火を止める。朝に仕込んでおいたサラダもお皿に盛り付けて完成だ。

「弥生、できた。ご飯にしよう」

「はぁーい」

YouTubeを止める。テレビをつけながらだと食がなかなか進まない。食事をしながら会話を楽しみたいという思いからも、食事中はテレビを見ない方針に、今の所はしている。(妻はテレビをつけたままにしているらしい…)

煮込み過ぎてかぼちゃが溶け込んで黄色くなってしまったシチューをスプーンですくい一口。

「お、うまい」

隣の弥生も小さいスプーンで、にんじんと一緒にシチューをすくいそれを口に運ぶ。僕は少しだけ緊張する。

「…おいしい!」

思わず笑みがこぼれる。この一言を聞きたいために、僕はいつも料理をするのだ。

続く

やまだ のりお

◆所有資格◆
薬剤師
簿記3級
FP3級
 
◆経歴
前職:東証プライム上場企業 営業職

現職:サービス業 エリアマネージャー
 
第一子誕生をきっかけに転職。
仕事と家族と充実した毎日を過ごしています!
 
資格と経験を活かしつつ
健康・お金・転職・マネジメント
などの情報を発信しています!

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