第40話~長女と1泊2日デート 夜の横浜編~

家族

晩御飯の前に…

「ごはん食べる前に、大きいお風呂入りに行こうか?」

「いくー!」

部屋のタオルを一式持って、大浴場のある最上階へ。

「ねぇパパ、このペッタンしているスリッパで、そとあるいていいの?」

部屋内にある屋内用のスリッパの事だ。

「このスリッパはね、部屋の中用のスリッパなんだ。だから基本的には外では履けないんだ」

「そうなんだ~」

いつもは「なんで?」と掘り下げる。今回はなぜか素直に「そうなんだ~」と可愛らしい返事をする。

ビジネスにおいて「なんで?」を掘り下げることは大切だ。俗にいう「なぜなぜ分析」である。これを実施することで、物事の問題の本質を捉え、課題解決に向かう、というロジカルな手法である。

5才のこどもは、そんなことは考えてはいないだろう。単純に自分自身が解決したいのだ。それでも子供に分かりやすく説明しようとなると、ビジネスにおいての「なぜなぜ」よりもはるかに難しい。

17時台のホテルの大浴場はほとんどお客さんがいなかった。

5才児とはいえ、性別は女性。女の子のカラダを見ず知らずの男性に見せるのは、多少なりともリスクとなる。ほぼ貸し切りの状態の浴室で、僕は少し安堵した。

弥生はそんなこともお構いなしにバシャバシャと、まるでプールで遊んでいるかのように大浴場を楽しんだ。彼女も大きくなったら、一人でもしくは友人とお風呂を楽しむことだろう。

横浜といえば…

18時にもなると腹時計は正確で、空腹を知らせる音が鳴る。僕と弥生は外に出て、みなとみらいから馬車道のエリアを散策していた。

「お腹空いたね。弥生、何食べたい?」

日帰りで来られるとはいえ、せっかく横浜に来たのであれば「魚」が食べたい。僕はそう強く願っていた。美味しそうな店が立ち並ぶ。鉄板焼きでも良いかな?ワクワク心を躍らせていた。

そんな時、弥生が叫んだ。

「とんかつ!」

僕は愕然とした。横浜に来てとんかつだと!?横浜まで来たら魚とか、海鮮系を食べるのが通なのではないか!?海なし県にいつもいる僕にとって、新鮮な海の幸を食べられるチャンスなんてそうそうない。

「と、とんかつ?弥生、せっかく海の近くに来たからさ、お魚食べたりしない?きっと埼玉のお魚より美味しいよ?」

それに対して、彼女はこう答えた。

「とんかつ!!」

…彼女の意志はどうやら固いようだ。僕は少ししょぼんとしながら街並みを歩いた。

テキトーに入ったとんかつ屋さんは、思った以上の味だった。後から調べてみると、どうやら横浜はとんかつ激戦区であることが判明した。

ぶあついロース肉がパクパクと腹の中におさまる。なかなか普通のとんかつ屋さんにはないような代物だった。

5才の弥生も、大きな豚ロース2切れをペロリと平らげる。

僕の中の固定概念が、とんかつという選択肢を無くしてしまっていたのだ。そういう意味では、「横浜と言えば…」のような予備知識を持っていない5才児の発想に軍配が上がったことになる。

「パパ、こんなに美味しいとんかつなかなか食べたことなかったよ。弥生がとんかつを食べたいって言っていたおかげだね。弥生、ありがとう」

「パパ、ごはん食べ終わったからデザート食べていい?」

このどことなくちぐはくな返答に笑いながら、僕は首を縦に振った。

とんかつ馬車道さくら 本店(←お店の情報はこちらをクリック)

続く

やまだ のりお

◆所有資格◆
薬剤師
簿記3級
FP3級
 
◆経歴
前職:東証プライム上場企業 営業職

現職:サービス業 エリアマネージャー
 
第一子誕生をきっかけに転職。
仕事と家族と充実した毎日を過ごしています!
 
資格と経験を活かしつつ
健康・お金・転職・マネジメント
などの情報を発信しています!

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