大きな観覧車
10時30分にホテルをゆっくりチェックアウト。雲一つない快晴の下を、手をつないで歩く。
「弥生、これからカップヌードルミュージアムに行くんだけどそれまでちょっと時間があるから、近くの観覧車に乗ってみようか」
「のりたい!かんらんしゃ~」
過去に3度ほど、観覧車に乗ったことがある。いずれも「むさしの村」という埼玉の北の方にあるレトロな遊園地のものだ。
JAが経営している遊園地だが、未就学児にはドストライクの内容で楽しめる場所となっている。常に程よく空いているのも、大人が好んで連れて行きたい理由の一つになる。
弥生はその観覧車しか今まで乗ったことがない。
ホテルから10分ほど歩くと、目の前に大きな観覧車が現れた。
日本で3番目に高い、コスモクロック21
コスモワールドという遊園地の「コスモクロック21」。112.5メートルという高さは、
- OSAKA WHEEL 123メートル
- ダイヤと花の大観覧車 117メートル
…に次いで、日本で3番目に高い観覧車である。
「パパ~!すごいたかいよ~!むさしのむらよりもおおきいね!」
むさしの村の観覧車は30メートルという高さだから、その差は約4倍。彼女の中で観覧車という概念が大きく変わった瞬間だっただろう。
「本当に大きいよね。父ちゃんもこんなに大きい観覧車は乗ったことないかもしれない」
「そうなの?」
本当だった。20代の頃に住んでいた関西には、「天保山観覧車」という、コスモクロックと同じ高さの観覧車があった。だが、乗ったことはなかった。
「観覧車に乗ったカップルは必ず別れる」という根も葉もない謎のジンクスを当時は守っていたからである。
そんな時期もあったなと、弥生との会話で昔を思い出しながら、観覧車の列に並ぶ。開店直後にも関わらず、長蛇の列をなしていた。
乗車前の記念撮影も1枚撮ってもらった。愛娘とツーショットも、きっと20~30年後は照れくさくて写真を撮ることを自ら拒んでしまうかもしれない。今のうちにしっかり記録と記憶に残しておこう。そう考えるとデータ付き1,200円の値段は決して高くない。
観覧車から見る景色
観覧車から見えたのは、横浜の絶景だった。車や人、建物がどんどん小さくなっていく。あらゆるものが俯瞰できるような気がした。いろんな人がいて、いろんな物語がある。全体から見るとそれは大したものではない。僕の普段考えているような事も、とてもちっぽけなことに感じた。
「あ、メリーゴーランド!パパ、おっきいまわるブランコもあるよ!」
弥生にとっても上から見る景色は新鮮で楽しいようだった。はしゃぐ長女の姿を見て、僕も自然と顔がほころぶ。
「あ!なんかへんなのりものがある!」
横浜には、ゴンドラのような乗り物がある。都会とゴンドラは僕の中では相容れない組み合わせだったが、目の前にあるロープウェイはとても魅力に見えた。
「弥生、帰りはあれに乗って帰ろうか」
「おうちまでかえれるの?」
「ははは、家は電車で帰るよ。その電車に乗るところまで、連れてってくれるんだ」
「そうなんだ~」
景色が大きく、近づいてきた。そろそろ観覧車から降りる時間だ。
続く
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