第44話~長女と1泊2日デート 急流すべり 編 

家族

老若男女楽しめる横浜

手作りカップラーメンを2つ抱えた弥生は駆け足でコスモワールドへ。観覧車の乗ったエリアである。

このエリアにいれば、一日遊び続けることができるな、と感じる。コスモワールドだけでも半日は過ごすことが出来るし、赤レンガや山下公園などののんびりする場所もある。横浜が観光客にとっても、居住者にとっても人気スポットであることが改めて分かる。

20代の頃は、当時付き合っていた彼女と横浜に何度も遊びに来たことがある。山下公園のベンチでのんびり過ごすだけでも楽しかった。

40才になり、今こうして5才の愛娘と一緒にのんびりと楽しめる。きっと生きていれば、60代70代になっても楽しめる街なのだろうと、しっぽりと感じた。

5才児、絶叫系に乗る

「あれのりたい!」

弥生が指を差したのは絶叫系のウォータースライダーだった。まさかの絶叫系好きか?それともただの興味本位なのか?僕は驚いてしまった。

「弥生すごいね。結構こわいかもだけど大丈夫?」

「だいじょうぶ!」

絶叫系に年齢制限はないらしく、身長が110cm以上であれば問題はないらしい。

数か月前に測定した結果では確か106cmだったような記憶が…改めて身長を測ってみる。

「このラインまでに到達していれば大丈夫」というラインをギリギリ越えることができた。いつのまにか110cmを越える慎重になっていたようだ。

自分が小中学生の頃に住んでいた社宅には、柱に線が刻まれてあった。僕の身長の足跡だった。父親が僕の身長を記録していたのだ。

父と母は今でもすれ違っている。僕は父のようには決してならないと、父の逆の道を歩むよう努めてきた。だが、気が付けば父と同じルートを辿っているような気がする。すれ違いを避けようとすればするほど、夫婦の距離感がどんどんと離れていく感覚がある。不思議なものである。

「ねぇパパ、進もう!」

…弥生の言葉にハッと我に返る。急流すべりの行列が前に進んでいた。僕は慌てて歩を進める。

この急流すべり、クリフ・ドロップは小さな子供も楽しめるアトラクションである。身長が110cm以上あればどの方でも乗車可能だ。

特徴的なのが、「絶叫する声をスコア化」するところである。騒げば騒ぐほど点数が高くなる。高得点をたたき出すと、周りからは歓声が上がる。声を出すことを恥ずかしくさせない、面白い試みである。

「やよい、いっぱい声を出せば点数が出るんだって。頑張って大きな声出してみようね」

「うん!」

「よし、並んでいるうちに練習だ。一回やってみよう。ワー!!」

「わー!!」

周りから微笑ましい視線を感じる。5才児と一緒にいれば、恥じらいを一切感じることはない。

スコアボードには、700点台、600点台と、高い点数が並んでいる。

大きな声を出しているお客さんですら400点台がやっとなのに、700点台を出すお客さんは一体どんなシャウトをしているのだろう。

いざ、急降下

自分たちの番が来た。弥生は颯爽と船に乗車。僕は彼女を抱え込むように後ろに座る。

ちゃぷちゃぷと波に揺られ、ゆっくりと上昇する。ディズニーランドのスプラッシュマウンテンを思い出す。小学生の頃でも怖かった急降下のアトラクションを、わが娘は怖いもの知らずで乗り込んでいる。とても頼もしい。

頂上に向かって、ガタガタと音を鳴らしながら船が動く。向こう側に見えるのは空だけだ。レールも途中で切れている。この風景がまた緊張を高めてくれる。

「弥生、いよいよだぞ。声いっぱい出そうね」

「きんちょうする~!」

レールも一切なくなった。船が空に投げ出された感覚。かと思ったら、ゴトンと船が平面に戻る。なだらかな下り坂になっていく。少しずつスピードが上がってくる。目先10メートルには何も見えない。

船がガクンと下を向く。吸い込まれるように急降下。スピードがぐんぐんあがって、むしろ時が止まっているかのような瞬間だった。

「わーーー!!!!!」

僕は思いっきり叫んだ。だが数日前に風邪を引いていたこともあり、喉が痛くてうまく声が出せない。こうなったら、弥生の絶叫に頼るしかない。

一瞬の急降下が終わる。水平に、穏やかに船は出口へ向かう。

スコアボードに点数が表示された。

42点

おそらく、今日の来客の中で最も低いだろう点数だった。

「あー、全然点数出なかった…弥生、声出せた?」

「…」

弥生からは返事がない。身体が硬直している。

「弥生、どうだった?」

「…こわかった」

彼女の身体が少しだけ震えている。どうやら楽しそうだというイメージから大きくGAPがあったようだった。

「すごいね!パパ、こういうの、実はもっと大きくなってからじゃないと乗れなかったんだよ。かっこいいよ、弥生」

「こわかった~。パパ、ぎゅーして」

「よしよし、すごいぞ」

泣きべそをかいている弥生を抱きしめる。この経験がトラウマになるか、糧となるか…彼女の今後に期待しよう。

続く

やまだ のりお

◆所有資格◆
薬剤師
簿記3級
FP3級
 
◆経歴
前職:東証プライム上場企業 営業職

現職:サービス業 エリアマネージャー
 
第一子誕生をきっかけに転職。
仕事と家族と充実した毎日を過ごしています!
 
資格と経験を活かしつつ
健康・お金・転職・マネジメント
などの情報を発信しています!

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