第45話~長女と1泊2日デート エアキャビン 編

家族

横浜最後のアトラクション

コスモワールドで絶叫系の「クリフドロップ」を初体験した弥生。

「これのりたい!」と意気揚々とアトラクションに乗り込んだものの、思った以上にスピードが早く、終わってからは恐怖の余韻でビクビクと震えていた。

僕が少しの時間だけハグすると落ち着きを取り戻し、「おなかすいたからおやつたべたい」と普段の調子に戻り少し安堵する。

アトラクションの行列から終了まで1時間以上は費やしたか、あたりはすっかり夕暮れになっていた。楽しかった長女との泊りのお出かけもいよいよ終盤。もの寂しさをおぼえながら、弥生に声をかける。

「じゃあ、そろそろおうちに帰ろうか。まずはロープウェイに乗ろう」

「なぞの、しかくいはこ!」

「そうそう、あの箱ね」

コスモワールドを後にし、ロープウェイが出発しているだろう場所に、なんとなく向かう。人の流れもそっちの方に向かっているので、きっと合っている。

YOKOHAMA AIR CABIN

あのロープウェイは、僕の記憶からするとだいぶ新しい気がする。横浜のこのエリアに遊びに来たのは実に15年ぶりくらいだ。あのような乗り物はなかった。

調べてみると、ロープウエイ、正式名所はYOKOHAMA AIR CABIN(ヨコハマエアキャビン)という乗り物が出来たのが、2021年の4月からということらしい。完成してわずか3年半なのだから、自分の記憶にないのも当然である。

まだ新しい乗り物だ、乗車券を買うのにも行列をなしている。「ご乗車まで30分」という看板が表示されている。

「やよい、30分くらい待つって。大丈夫?」

「30ぷんて、なんびょう?」

弥生にはまだ分の概念がない。

「1,800秒かな」

「ながーい」

「パパとお話していたらあっという間だよ」

「ふーん、まぁべつにいいけど?」

最近、大人びたセリフも口にするようになった。「べつにいいけど」なんて言い回し、女の子が良く使うようなツンデレな表現だ。10年後か20年後、弥生は男性を振り回すような女性になっていくのだろうか。

おしゃべりしたり、携帯で今まで撮った写真や動画を一緒に眺めたりしていると、30分なんて時間は本当にあっという間で、すぐに乗車時間となった。

都会×ロープウェイ

360度見渡せる透明な箱に乗り込む。椅子のような場所に腰かけると、夕に暮れた横浜を空から一望することができた。

「おぉ…」

「パパ、ひとがちっちゃくなってるよ!」

コスモワールドの観覧車ほどの高さはないが、ハッキリと移動していくYOKOHAMA AIR CABINは、また別の感動がある。何台もの車が通っている大きな道路を上から眺められる。大都会にロープウェイという組み合わせが、僕にとっては新鮮だった。

「パパ、どうが、とらせて!」

こどもの最近の主流は、テレビよりもYouTubeだ。「よかったらグッドボタンとチャンネル登録よろしくね」なんてセリフまで丸々覚えてしまう。

そのため動画も好きなようで、僕のiPhoneを奪っては撮影に勤しんでいる。

人間は、思い出を作るために生きている。そのために一生懸命勉強し、働き、お金を稼ぎ、家族を持ち、衝突する。すべて「思い出」のためなのだ。

この一瞬もあっという間に思い出になる。すぐに1か月、1年が経ち、「あの時は楽しかったな」というシーンになってしまうのだ。

娘の、ひたむきにiPhoneをかざして周りの風景を撮影する姿をしっかりと焼き付ける。この思い出が少しでもあせないように。

ロープウェイから幻想的な音楽が流れる。どこか哀愁をただよわせるものだった。気付けば、到着駅の桜木町駅が大きくなってきた。

続く

やまだ のりお

◆所有資格◆
薬剤師
簿記3級
FP3級
 
◆経歴
前職:東証プライム上場企業 営業職

現職:サービス業 エリアマネージャー
 
第一子誕生をきっかけに転職。
仕事と家族と充実した毎日を過ごしています!
 
資格と経験を活かしつつ
健康・お金・転職・マネジメント
などの情報を発信しています!

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