アパ違い
「たのしかった〜」
長女がどうやらご満悦の様子。父娘水入らずの1泊2日の小旅行は初日が終わろうとしている。
みなとみらい線の新高島から馬車道駅へ。17時頃になると、日中混雑していた路線もまばらな状態になっている。
11月になると、日が短くなっていることが実感できる。馬車道駅に着いた頃には、あたりがだいぶ暗くなってきた。
「パパ、きょうおとまりするところどこ?」
弥生が訪ねる。今日泊まるホテルは、アパホテル横浜関内というところである。
アパホテルは全国展開しているホテルである。駅前などの好立地に建設されているので、アクセスに便利だ。場所によっては大浴場が備わっているので、お風呂好きなやまだのりおとしては選択する理由になる。
駅出口から、「APA」という大きな文字が見えた。まるでタワーマンションのような立派な建物だ。
「あ、たぶんあそこだよ。ここから歩いて行けそうだ」
「うん、ちょっときょりあるね」
大人の足からすれば5分くらい。せいぜい300メートルくらいの距離。5才児にしてみれば確かに距離はあるのだろうか。
そこに到着すると、ビジネスホテルのアパホテルらしからぬ豪華絢爛なたたずまい。誇張表現かもしれないが、まるでホテルオークラのような外観を彷彿とさせる。海外旅行者らしいお客さんでごったがえしている。
シャンデリアで煌々と照らされていてる受付フロント。
「うわ…こんなきれいなホテル、予約した覚えはないな」
「パパ、すごいきれいだね!」
おそるおそる受付をしようとするが、
「お客様、どうやらご予約がされていないようです」
そんな、まさか。もう一度予約内容を確認する。確かに楽天トラベルで予約完了済みの画面が表示されている。
「予約できているようです。この画面でも確認できます」
…と、iPhone画面をフロントスタッフに見せる。フロントスタッフはハッとする。
「あ…お客様がご予約されているのは、アパホテル横浜関内のほうですね。こちらのホテルは、アパホテル横浜ベイタワーとなります」
予約したホテルが違ったことが判明し、僕と弥生はホテルを出た。娘をだいぶ歩かせてしまったので、タクシーでアパホテル関内へ。
GAPに落胆する父への優しい一言
到着したホテルは、いかにもビジネスホテルというたたずまいだった。僕が想定していたビジネスホテルそのものだったのだが、アパホテル横浜ベイタワーと比べると、明らかに見劣りしてしまう。
チェックインを済ましシングルの部屋へ。かなりコンパクトで年季の入った部屋だ。
娘はベッドに飛び乗って、はしゃぎながら叫んだ。
「パパ、このベッドすごくひろいよ!ほら!」
ベッドでジャンプし無我夢中で遊んでいる。ホテルの格式という概念のないからか、それとも僕の落胆を肌で感じ取ってただただ僕を元気づけているのか。
どちらか分からず、なんとも複雑な気持ちになった。
「次に横浜に泊まりに来るときは、横浜ベイタワーの方を予約しよう」
そう心に誓ったのであった。
続く
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