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【小説】黄色い昼下がり「ビタミンC お菓子」の甘酸っぱい職場

ビタミンC お菓子1.:ため息と午後3時

鈴村見春

午後3時。
商社のオフィスは、コピー機の音とキーボードの軽快なタイピング音が交互に響く。


窓から差し込む秋の陽射しは柔らかいのに、
鈴村美晴(すずむら みはる)の胸の中には、なんとなく冷たい風が吹いていた。

彼女は椅子の背にもたれ、書類を閉じ、静かにため息をつく。
さらりとした黒髪ロングが肩を滑り落ち、切長の大きな瞳が伏せられる。
まつげの影が頬に落ち、鼻筋はすっと通り、薄く形のいい唇は小さく結ばれている。

163センチの長身、スレンダーな体型。
立ち上がれば自然と背筋が伸び、すらりとした姿は社内でもひときわ目を引く。
派手ではないが、上品さと凛とした雰囲気を纏い、男性社員の視線を集める存在だ。

けれど、この洗練された見た目からは想像できない過去が、美晴にはあった。

地味なの高校生活からの脱却

――高校までの鈴村美晴は、根暗で人見知りで、いつも教室の隅にいるような女の子だった。
黒縁のメガネをかけ、肩まで伸びた髪は結ぶだけ。会話の内容といえば、クラスメイトとの
「宿題やった?」程度で終わる。
恋愛とは縁遠く、告白どころか男子と二人で帰ったことすらない。

それでも大学に入学する前の春休み、彼女はひそかに決意していた。
――大学では、恋をしてみたい。

進学先は早稲田大学。地元・福井県敦賀市から離れ、誰も自分を知らない場所で、新しい自分になろうとした。


メガネをやめ、コンタクトに変えた。髪は美容室で整え、ほんのり茶髪でゆるいパーマをかけた。雑誌で見たファッションを真似して都会のオシャレな大学生が着ているような服で青空のキャンバスを歩いた。

都会になじめるよう、普段から無意識に出る福井独特の方言も、東京のラジオやYou Tubeを何度も聴いて、封印した。
最初はぎこちなかった笑顔も、サークル活動やアルバイトを重ねるうちに少しずつ自然になっていった。

そして入学から半年後、同じサークルの二学年上の先輩と話す機会が増えた。
落ち着いた物腰、優しい笑顔。彼と一緒にいると、自分が少しだけ特別な人間になれた気がした。

「美晴、今度二人でご飯行かない?」
その言葉は、彼女の大学生活を一変させた。

18歳で初めてできた彼氏。
それからの大学生活は、彼と過ごす時間で埋め尽くされた。


試験前には図書館で並んで勉強し、夏休みには海へ行き、冬にはイルミネーションを見に行った。
恋を知らなかった自分が、やっと「普通の女の子」になれたような気がしていた。

もっと綺麗になりたい。
彼女は彼のために自分磨きに没頭していった。

東京の有名な商社に入社した。理由は、上京した彼を追いかけたかったからだ。


もともと頭の切れた彼女。海外案件や大口顧客を担当するうちに、自然と立ち居振る舞いは洗練されていった。


黒髪ロングは艶を増し、メイクも服も洗練され、気づけば「社内の憧れの女性」と呼ばれるようになった。

突然告げられた終わり

しかし、大学の彼との時間は長くは続かなかった。
社会人2年目、25才になる春。
彼からの電話。
「ごめん、美晴。好きな人ができた」

耳を疑った。
冗談だと思った。
でも、電話口の沈黙がすべてを物語っていた。

その日、泣きながら高田馬場の一人用マンションに帰り、化粧も落とさずにベッドに顔を蹲り、倒れ込んだ。
翌朝、鏡に映ったのは、目が赤く腫れ、かつての「地味で冴えない」自分に戻ったような顔だった。

そこからの2年間、彼氏がいないと周囲に知れ渡り、様々な男性からのアプローチを受けた。それを全て拒み、恋愛を避け、仕事に没頭する日々だった。

しかし、心の奥底に残った傷はいつまでも癒えていなかった。あの失恋が、自分の中の「自信」を根こそぎ奪ってしまったのだ。

だからこそ、あの日――。
とんでもない失敗をした案件を上司にかばってくれた塚本尊の姿に、胸を打たれたのかもしれない。
優しさと頼もしさに触れた瞬間、凍っていた心が少しずつ溶けていくのを感じた。

ビタミンC お菓子2.塚本尊との出会い

今でも鮮明に覚えている。

大学の彼から別れを告げられて2年が経った春。大型案件のサプライ契約に関わる重要なプレゼンの日だった。
緊張のあまり言葉が詰まり、資料の一部を飛ばしてしまう。会議室の空気が一瞬、重くなった。
打ち合わせが終わった後、上司からは厳しい叱責。胸の奥がずしりと重くなり、視界がにじんだ。

そんなとき――。
「鈴村、気にすんな。失敗は誰にでもある」

振り向くと、そこに立っていたのが塚本尊だった。

身長180センチあるかないか。鍛えられた体つき。チャコールグレイのスーツ越しにも分かる肩幅の広さと引き締まったウエスト。
綺麗に整えられたベリーショートの黒髪に、韓流俳優を思わせるような目鼻立ちに、やや低めの落ち着いた声。端正な顔に、柔らかな笑みが浮かんでいる。

それだけではない。
「さっきの件、俺が部長に話しておく。資料のフォローは俺がやるから」
そう言って、自分の手元の予定を調整し、残業までしてくれた。

その後も何事もなかったかのように業務を進め、翌日の会議では、彼の言葉でクライアントの信頼を取り戻してくれた。
社内の誰もが知る、有能で頼れる存在――それが塚本尊だった。


面倒見の良さと社内での評判

「塚本さんって、本当に面倒見がいいよね」
廊下で交わされるそんな声を、何度も耳にした。

後輩のミスをさりげなくフォローし、取引先との難しい交渉も穏やかにまとめる。
部内の飲み会では端から端まで気を配り、誰も孤立させない。
仕事だけでなく、人の心を動かす言葉と行動を自然にできる人だった。

女性社員からの人気も高く、よく休憩スペースで彼の周りに人が集まっている。
それでも、私生活については多くを語らない。彼女がいるのかどうかも分からない。


近づきたいのに近づけない

気づけば、私は彼を目で追うようになっていた。
会議室で発言するときの低く響く声、パソコンを打つ真剣な横顔、ふと見せる柔らかい笑み――その全てが胸を締め付ける。

けれど、元々の性格が足を引っ張った。
高校時代のような、人見知りで内気な自分が顔を出し、プライベートな話を切り出す勇気が出ない。

「もっと話しかけたい。でも、迷惑かもしれない」
「そもそも、あんな人と私じゃ釣り合わない」

考えれば考えるほど、体の奥がじわじわと重くなっていく。
このモヤモヤをどうにかする術を、私はまだ知らなかった。


ストレスと甘いもの

気づけば、デスクの引き出しにチョコレートが常備されるようになっていた。


仕事が一段落するたび、ひと粒。
メールの返信に追われたあと、ひと粒。
塚本尊のことを考えるたびに、ひと粒。
ストレスを感じたときには、無意識に銀紙を剥がして口に放り込んでいた。

甘さが舌に広がると、一瞬だけ気持ちが緩む。
けれど、その後に残るのは、自己嫌悪と重たい胃の感覚。

――こんなことをしていても、何も変わらない。
分かっていても、やめられない。

午後3時、またひと粒。
ため息をつきながら口にしたチョコの甘さが、なんだかやけに重たく感じられたその日。

背後から、明るい声がした。
「美晴ちょっと待った!!」

その声の主は、お菓子マニアの同僚・桃田天音だった。

ビタミンC お菓子3.お菓子マニアの同僚 ー 桃田 天音(ももた あまね)

桃田天音は、鈴村美晴と同じ年に商社へ入社した同期だ。

身長150センチ。

顔は丸みを帯びた卵型で、柔らかく優しい印象。

やや大きめの目で、切れ長と丸みがバランスよく混ざった形。

小ぶりな鼻ではあるが、筋は通っている。

唇は薄すぎず厚すぎない自然なピンク色。口角がわ柔らかな微笑みを感じさせる。

服を着ていても分かる女性らしい体型は、とあるTV局で「人気女子アナウンサーランキング1位」を獲得したあの女性を彷彿とさせ、女性以上に男性にとってとても魅力的に見えそうだ。


興味のあるものはとにかくお菓子。「お菓子を海外にも広めたい」という理由だけで商社を志望した、という筋金入りのお菓子マニアだった。

仕事は要領よくこなすが、際立った成果を出すわけでもない。
それでも、会社から咎められることは一度もない。必要なことはきちんとやり、あとは自分の好きな世界――つまりお菓子に全力投球しているのだ。


もちろん人気も高くこれまで幾多の男性から告白されている。
けれど、天音はいつもあっけらかんと
「ごめん、お菓子のことで頭がいっぱいなの」
そう言って笑って断る。


そんな桃田も19歳のときから5年間付き合っていた彼がいたが、ある日、彼の浮気が発覚。


裏切られたショックで泣きながらコンビニで山ほどお菓子を買い込み、やけ食いした。
そのとき口にした新作のチョコが驚くほど美味しくて、気づけば心の痛みよりもお菓子の奥深さに夢中になっていた。

浮気した彼はその後、土下座までして謝ってきたらしい。


けれど、天音はきっぱりと言い放った。
「私、あなたよりお菓子のほうが大事だから」
と、自ら別れを告げた。

新人の頃、私と天音は別の部署に配属されていたためほとんど接点はなかった。

しかしある社内の懇談会で、お互いの恋愛の終わり方を偶然話したことがあった。
「…なんか似てるよね、うちら」
そう言って笑った天音の笑顔に、私は初めて同期の中で“本当の友達”を見つけた気がした。

今は隣の部署で机も近く、プライベートでも連絡を取り合う親友だ。
明るく遠慮なく物を言うけれど、不思議と傷つくことはない。
だからこそ、天音からの一言は私の習慣を大きく変えるきっかけになったのだ――。

4.かむかむレモンのビタミンCの美容効果とストレス対策

背後から、明るく通る声。振り向けば、案の定、桃田天音が立っていた。
腕を組み、じっとチョコを見つめている。

「またそれ?チョコレートはね、高カカオじゃない限り、お肌にいいってわけじゃないんだから」

「え、でも甘いもの食べると落ち着くし…」

「落ち着くのは一瞬でしょ?そのあと吹き出物とかシミの原因になったらどうするの」

天音はそう言って、自分のデスクから黄色い袋を持ってきた。
「肌のことを考えるなら、ビタミンCをとったほうがいいわけ。ほら、これ」
差し出されたのは、かむかむレモン

「ビタミンCってストレスでも失われるのよ。今の美晴みたいに仕事も恋愛も忙しい人には必須なの」

「恋愛に…いそがしい?」美晴は思わず声を詰まらせた。
天音はにやりと笑う。
「だってそうでしょ。いっつも塚本さんのこと、ボーッと見つめてるじゃん。好きなんでしょ?」

「えっ!!そんなこと…」
慌てて否定する美晴。しかし天音は食い気味に続ける。
「隠しても無駄だよ。好きって顔にもろ書いてある。私には分かるんだから」

「…天音」
呆れたように名前を呼ぶ美晴に、天音は悪戯っぽく片目をつむった。

天音の声はからかうようでいて、どこか優しさが混じっていた。
彼女はただの“お菓子マニア”ではない。人をよく見ていて、必要なときに背中を押すタイプだ。

「ビタミンCはストレスを受けるとカラダで大量に使われちゃうの。足りなくなると、肌荒れも疲れも取れなくなるんだから」

「…そうなの?」

「そうよ。だから、こういうビタミンCがたくさん入っているお菓子でこまめに補給すれば、少なくとも肌と気分は守れるってわけ」

天音は袋の中にあるかむかむレモンの一粒を美晴に催促した。
「まずは食べてみなって」

美晴はおそるおそる口に入れる。
酸味が舌全体を包み込み、思わず目を細めた。
けれど、その酸っぱさはすぐに柔らかな甘みに変わり、胸の奥にあった重さがほんの少し軽くなった気がした。

「美味しい!」
美春は思わず声を漏らした。

天音は満足そうに笑った。
「ほら、チョコもいいけど、かむかむレモンも悪くないでしょ? 」

美晴は言葉を返さず、もう一粒、かむかむレモンを口に運んだ。
その小さな粒が、これから自分の午後を少しずつ変えていく予感がした。

続く

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やまだ のりお

◆所有資格◆
フィナンシャルプランナー3級
簿記3級
薬剤師
 
◆趣味
マイホームでのんびり
お金の勉強
料理
 
◆ご紹介 
かつての「超浪費家」時代に
貯金0円で妻にプロポーズ!
 
わが子誕生後に危機感を覚え
必死にお金の勉強を開始。
 
お金の資格を2つ取得。
夢のマイホーム購入後も順調に資産増加中。
 
「お家」にまつわる情報を発信していきます!

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