忘れた童心を取り戻す
子供が楽しいと感じる瞬間はどのようなものがあるか、大人になると忘れかけるものがたくさんある。
大人は打算的であり、純粋さを失う。嘘や裏切りなどが多くなるためだ。そのため、
「こどものころ、どんな事が楽しかったんだっけ?」と童心を失ってしまうことがある。
それを思い出させてくれるのが、やはり我が子である。弥生はどんなものでも楽しんでしまう。それはどんな5才児でもそうなのだろう。あらゆるものをおもちゃ化し、ゲーム化してしまう。「そんなものが楽しいのか」と感心してしまう。
子供は遊びの天才
休日の朝、いつものように晩御飯の仕込みを終わらせてからPC作業を進めていると、弥生が「あつーい」といい、家にあるハンディファン(扇風機)を持ち自分の顔にあてがっていた。気持ちよさそうにしているな、と思ったのも束の間、いろいろなものに向かってそのハンディファンの風を当て始めた。
消しゴム、くし、スーパーボール、ティッシュ…動かないものもあれば、ティッシュのようにふわふわとなびくものもある。それを弥生は面白がった。
「のどかな風景だな」と思いながら、PCの作業を止めて彼女の様子を観察していた。
次に選んだのが、お肉やお魚を取り出した後に水で洗って乾かしたハッポースチロールのタッパーだった。扇風機の風を当てるとツツーと綺麗に動くことができた。
「パパ〜、見て!」
弥生は目をキラキラさせて言ってきた。「すごいねー!」と僕もそれに応じる。そしてあるアイディアが浮かんだ。
子供のアイディアと大人の経験のコラボ
「やよい、その白い発泡スチロールちょうだい」
「ん?」
僕はハサミを取り出して、チョキチョキと発泡スチロールを切り始めた。
「パパ、何作ってるの?」
弥生は興味津々だ。
「うんとねー…」
丸型に切って、黒い油性のマーカーで仕上げをする。
「どう?何に見える?」
弥生は大きな声で
「サッカーボール!」
と答えた。
「正解。じゃあ扇風機2つ使って…こっちおいで」
リビングにある小さなテーブルにその発泡スチロールのサッカーボールを置いた。
「じゃあこれから扇風機サッカーをします!10点取った方が勝ちです!」
「えぇ〜!楽しそう!」
僕と弥生は向き合って、1つのボールに向かって扇風機の風を当てた。ペラペラのサッカーボールはプルプルと震えたかと思うと、イレギュラーな動きを見せて、宙にまったりはみ出たり、さまざまな方向に飛んでいく。
「両サイドにボールが出ちゃったらスローインね。相手の線を越えたらゴールってことで」
「うわぁー!楽しい!」
僕も珍しく童心に帰り、白熱して扇風機サッカーに集中した。
「…はい、10対4で、チーム弥生の勝ちです!」
「パパ、もういっかい!」
「お、いいよ。もう一回やろうか」
弥生も気に入ってくれたようだ。
子供のアイディアから、新しい遊びが生まれる。こうやって大人の僕自身も刺激をもらえる。子供と遊ぶことは、大人のためにもなるのである。
続く
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